JCFジュニア強化情報
Home > JCFジュニア強化情報 > 第16回ジュニア全日本選手権ロードレースリポート

第16回ジュニア全日本選手権ロードレースリポート

第16回ジュニア全日本選手権ロードレース 2011年6月25日

今年の全日本ジュニア選手権は内陸部とはいえ少なからず震災被害のある岩手県八幡平で行われた。震災後日常生活もままならない中で今大会への準備に関わった多くの関係者の皆様方に最初に感謝の意を表したい。

コースは1周15.5kmを8周する124kmで、ゴール前が平均勾配6%弱の3.5kmの登り坂でそれ以外は見通しが良い向かい風の下り坂とそして牧場の中を抜けていく平坦というわかりやすい設定。ジュニアレースの場合はチームでの戦いというのが考えにくく、強い選手達は後手に回るより数人で逃げてしまったほうが有利と考えられる。ただこの日は直線の長い下り坂は翌日のエリートの日と異なり向かい風だったため、ここで集団の選手は脚を大きく休められるので、それを考慮して優勝を狙う選手たちがどこで攻撃してどのようにレースを作っていくか興味深い。

若干肌寒さを感じる中レースはスタート。ニュートラル解除後の1周目の平坦で鈴木鳳隼(紫波総合高校)、岸崇仁(関東第一高)、堀川裕輝(法政二高)、新村穣(保土ヶ谷高)、内田拓巳(千原台高)、入佐直希(南大隅高)の6名が30秒ほどの差をつけて先行するが、登りで後続の大集団は一列になりながら吸収。2周目は1周目と同じく地元岩手の鈴木鳳隼、そして石井祥平(保土ヶ谷高)、市川貴大(川越工高)の3名が集団から抜け出す。平坦区間では追撃に入った中村涼介(広島工専)、井上尚大(日大豊山高)、山崎太陽(衣台高)、新村、入佐の5名に30秒、集団には1分の差をつける。登り区間で追撃の5名は前の3名を捉え先頭グループは8名になるが3周目の下りきったあたりで集団に吸収されてまた大集団に。

3周目に入り金井誠人(明治大)、小石祐馬(京都MASSA FOCUS SUPER-B)、大村恒平(防府商高)の3人が抜け出し集団とのタイム差を一気に広げていく。3人は向かい風の下り坂もしっかりローテーションして4周目には集団に最大3分近くの差をつける。

5周目の登りで金井が後退し、先頭は2名。集団は大きなタイム差に焦りを感じ、登りではアタックが頻繁にかかり先頭2名とのタイム差が徐々に縮まりはじめるが、向かい風の下りを率先して牽く選手は出てこず登りで大きく縮まったタイム差が下りでまた少し開く展開。先頭では小石が登りでペースを作り、下り、平坦では二人がしっかりローテーションして一定ペースで逃げ続ける。5周目には1分10秒の差に縮まるが、集団は毎周登りで抜け出したい選手らの攻撃でペースが上がり、下りではペースが緩む形で進む展開のなか6周目に優勝候補選手を数名含む決定的な追撃グループが出来る。メンバーは優勝候補筆頭の西村大輝(昭和第一学園高)、清水太己(ブリヂストンエスポワール)、城田大和(北中城高)、久保田元気(日本大)、佐々木眞也(横浜高)。佐々木はこの周の登りはじめで後退するが、他の脚の揃った4名は登りでは清水、西村が中心になりペースを上げて一気に前の2名を抜き去る。

7周目に入り、先頭の4名は向かい風の下り、その後の平坦もしっかり踏み続け、集団とのタイム差を登り入り口までで45秒までに広げる。集団では追撃の動きもあるが、前のメンバーは力があり全員が脚を使ってしっかり回っているのでタイム差は縮まらない。7周目の登り頂上付近で先頭グループの中で力強い走りをしていた城田が少しずつ後退。そして集団からはこの登りで馬渡伸弥(昭和第一学園高)が抜け出しそれに中田瑛次(和歌山北高)が続き二人で追撃を開始する。

ラスト周回の8周目は依然先頭3名が協調体制で逃げ続ける。後続は馬渡、中田の2名に登りで集団から1人で抜け出してきた山崎航(Team Eurasia-Fondriest Bikes)が向かい風の中一人で踏み続け下りきったところで追撃の二人に合流する。さらに先頭から下がってきた城田も加わり4名の追撃グループを形成し、山崎、中田が中心となりローテーションして登り口までに先頭3名に20秒ほどの差に詰めてくる。先頭3名はペースが落ち切ることはないものの、ゴールを意識した駆け引きも始まり追撃4名には前に追いつくには願ってもない展開。追撃4名の中から登り口で城田がまず後退して、まずは馬渡がジワジワ3名との差を詰めてくるが、ここで一気にペースを上げすぎて脚にきた馬渡が後退。今度は山崎が前だけをみて中田を引き連れて先頭3名に迫ってくる。先頭3名は登りスプリントに圧倒的な力をもつ西村を警戒しながらも、ただ表彰台ではなく後続につかまってでも優勝のみを狙う走りをしている。ラスト2kmをきってから中田、山崎は先頭3名に合流し5名の先頭グループになる。最後のスプリントに向けて牽制気味の中で、ラスト1kmをきったあたりで清水が攻撃するが、皆が反応する。そしてラスト700-800mあたりで山崎のアタックに即座に反応した西村がそのまま右側からアタックするとあまりのスピード差に後ろ4名は誰も反応できず一瞬で勝負が決まる。西村がそのままゴールまで踏み続け2位久保田に16秒差をつけて優勝。2位以下はスプリント勝負というより力勝負となり、3位中田、4位清水、5位山崎と各選手間でタイム差がつく形でゴール。6位には馬渡が迫ってきた集団から逃げ切る。

この日は長い下りが向かい風で力を温存しやすい大集団が有利のなか、レース開始後から積極的に動いた選手達、中盤からタイム差をつけ逃げた3名、そして集団から力で抜け出し先頭グループを形成した4名、さらに最後まであきらめずに集団から抜け出し先頭グループを追いかけてきた3名の他にも最後まで力を出して少しでも前の順位でゴールしようとジュニア選手達は素晴らしいレースを見せてくれた。

JCFジュニア強化育成部会員 柿木孝之


5周目 逃げる小石選手と大村選手

6周目清水選手を先頭に集団を抜け出して先頭を追う5名の選手

7周目 先頭グループの西村選手、城田選手、久保田選手、清水選手の4名