全国女子合宿レポート
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2018全国女子トラック合宿レポート
12/22/Sat

年も押し迫った冬至のお昼過ぎ。朝から冷たい雨が降りしきる中、参加者は全国各地より伊豆ベロドロームに集まった。

保護者や指導者による送迎を受けている選手達、引率無しで遠路公共交通機関を利用してやってきた選手達。

いつものチーム単位での遠征とは雰囲気が異なり、緊張や不安のせいかバイクをセットアップしている様子を見ると表情が硬い選手が多い。

15時に受付を済ませた後【開講式】が始まる。

専門部理事長挨拶のあとスタッフの紹介および合宿全般の諸注意。最後に毎回専門部の合宿に格別のご支援を賜っているJKA担当者の方のご紹介もあった。


開講式

16時より【トレーニング?】開始。

年明け早々に控えた2019年トラックジュニアアジア選手権大会の為に合宿中のJCFジュニアナショナルトラックチームと走路をシェアしながらのトレーニング。


トレーニングの説明
4班に分かれた周回練習は安全性を重視して、2班毎の2チーム交互による10分間走。

ギアの指定は50×15あるいは46×14。初めて250m走路を走る選手も多く、スプリンターレーン内限定の走行で先頭交代はなし。

肩に力が入ってしまいぎこちないフォームの選手も数人いたが、若さの特権である対応力と柔軟性を発揮。少しずついつものフォームに近づいていった。


周回練習(1)
次のメニューは走路外側への先頭交代を採用したスプリンターレーン内の15分間走。

1コーナーで先頭交代を試みるが普段走っている走路とあまりにも形状が異なるため、なかなかうまく交代のタイミングがつかめない。


周回練習(2)

ここで活躍するのがラップタイムの指示や周回管理のために全員に装着させている無線機。

競技規則では使用が認められていない装備であるが、交代のタイミングや走路の使い方をダイレクトに指示することが可能。走路上の人数が多い今回の合宿の様な状況であっても、安全管理に大いに効果を発揮している。


無線機
トレーニングをすべて終えてからマイクロバスで全員一緒に宿舎へ移動。

相互理解も少しずつ深まったせいか、和やかな雰囲気の中で夕食。

その後ミーティングを実施し、明日の出発までの日程を確認。

その後トレーナーとして参加いただいている川田綾乃先生による【女性アスリート講習】を受講。

テーマは「女性アスリートのための月経対策」。

完全に理解するためには最低限の医学的な知識も必要であったが、パワーポイントとテキストを併用してお話いただき、極めて分かりやすい内容であった。

これからの日々のコンディショニングや障害予防を考えるうえでの一助としてほしい。


女子アスリート講習
12/23/Sun

 まだ薄暗い6時20分に宿舎玄関前に集合して、からだほぐしの体操。

朝食後ベロドロームに移動して8時30分より【トレーニング?】開始。

250m走路への習熟度を配慮して3班編成の周回練習で、1班と2班はステイヤーラインを挟んで上下2列での20分間走。

交代はそれぞれの外側方向である。

まだ走りに硬さが見られる3班は昨日同様スプリンターレーン内を走行。

1班と2班は2列並走に至るまで若干時間を要したが、少しずつ隣の選手との距離感をつかむことができていた。


周回練習(1)

次のメニューは集団走行時の他選手との距離感覚をさらに深化させるために1本目の周回練習と同じ配置で15分間走。

後半は見違えるほど集団がコンパクトになり極めてスムーズに先頭交代が行われていた。


周回練習(2)

午前中の最終メニューはギアを51×15または47×14に交換してフライングによるチームスプリント形式によるタイムトライアルを合計6セット。

2人1組編成により1人1周250mずつ先頭を走行する500m走。

走路の一番上部までは、らせん方式で徐々に移動する。

最初から全力で駆けおろしてダッシュすることが難しい選手もいたが、セットを重ねるごとに少しずつではあるが確実にタイムが短縮されていた。

計測されたタイムは無線を通じて選手に即座にフィードバックされ、各自次のタイムアタックに繋げていた。


スタンディング500m

 午後の【トレーニング2】は体調や走力差に配慮して一部のメンバーを入れ替え、午前中と同じ形態で3班編成による20分間走からスタート。

ほとんどの高校生にとってトラックシーズンは現在オフ期間であり、疲れも蓄積してきた状況で、周回のスピードについていけない選手も見受けられ始めた。

 次のメニューは今回の合宿で初めてのスタンディングスタート。インアウト2名ずつの時差スタートによる250m走を2セット。

インとアウトを1本ずつで交代するが遅いスピード域ではバイクを自在にコントロールできない選手が多い。

 引き続きスタンディングスタートからのチームスプリントをインとアウトを交代して2セット。

持ちタイムが近いペアであるが、やはり並走でのスタートではタイミングを合わせるのが難しい。

指導者の的確なアドバイスを受けながらコンビネーションも少しずつ改善された。

 最後に本日のタイムを参考にして、新たなチーム編成によるチームスプリントを1セット。

走順はお互いに相談して決定した。


チーム・スプリント

 宿舎へ戻ってからの日程は昨日とほぼ同様。

本日は夕食後にミーティングのみ実施し、明日のトレーニングに備えてしっかりとリカバリーにあてた。


12/24/Mon

 体操から朝食、移動までの日程は昨日までと同じ。

【トレーニング?】のウオーミングアップはギアを50×15または46×14に交換しての5班によるスプリンターレーン内での15分間走の予定であったが、体調不良や怪我をしている選手が数人参加できないため4班に再編成して実施。 

様々な理由で体調が整わない選手達は川田トレーナーがきめ細やかな対応。

フィジカルとメンタル両面から的確なサポートと手厚いケアを即座に受けられるのはありがたい。

た。


周回練習

 次のメニューはギアを51×15または47×14に交換して、3〜4名の5班編成によるチームスプリント方式のフライングダッシュ4セット。

 引き続き走力に優れている2班は先頭交代をしながらチームで走行するフライング1000mを2セット、その他の3班は引き続き同じメニューを2セット。

どのチームも疲労の色は隠せず、トレーニングのインターバルの会話が少なくなる。


フライング1000m

昼食をはさんで午後のスタートは専門部競技運営部会長による競技規則に関する講義。

テーマは「競技規則の構成と概念」であった。競技規則は選手の安全を守り、レースの公平・公正を担保するために存在していることについて再認識した。


競技規則講習

続いて順天堂大学の中村智洋先生による【ウエイトトレーニング講習】。

「自転車パフォーマンス向上のためにフィジカルトレーニングは必要か?」というタイトルで、実技講習に先立ち最新の科学的データを提示していただきながら、最大無酸素パワーを向上させる重要性について講義を受けた。


ウエイトトレーニング講習

講義終了後マイクロバスでサイクルスポーツセンターの多目的ホールに移動。

ジャパンナショナルチームが普段使用している施設で【トレーニングV】開始。

ウオームアップの後、今回はベンチプレスとスクワットの2種目に絞りフォームの確認とそれぞれのマックス値測定

。充実した施設で安全対策も完備されており、最大筋力測定にも安心してチャレンジすることができる

続いて向上させたい能力別でのトレーニングを実施。

内容は

(1)パワーを高める(最大負荷の40%・全速力・7回×4セット)

(2)筋力を高める(最大負荷の70%・5回以上×3セット、

(3)筋持久力を高める(最大負荷の30%・40秒間×1+3分×1)である。

講師による明るい雰囲気づくりとわかりやすく的確な目標設定、最大筋力が同レベルのグループ編成によってさらに意識も向上し、時にはお互い激励の言葉をかけあいながら明るい表情で取り組むことができており、最後に補助付きの懸垂で締めくくった。


ウエイト・トレーニング
夕食後JKA担当者様よりガールズケイリンのプレゼンを受けた。

進路先のひとつとして考えている選手達もおり、真剣な面持ちで話を聞いていた。


ガールズケイリンのプレゼン
12/25/Tue

最終日の朝は散歩を取り入れてリフレッシュ。

体ほぐしの後の朝食は親睦も深まりひときわ明るい表情であった。

【トレーニング?】は4班に分かれての15分間走。初日にはぎこちないフォームだった選手たちにも著しく改善が見られている。


最後のメニューはケイリン。

来年3月に開催される選抜大会でこの種目に出場している選手も多く、絶好の実戦形式のトレーニングとなった。

4組で実施されたが、レース経験の浅さからくる走行レーンの違反や競技規則を十分理解していないための動きが見られた。

1セット目終了後、直ちに走行に関する留意点と規則に関するレクチャーを受けて2セット目に臨んだ。

2セット目は安全かつ積極的な展開が各レースで見られ、春シーズンにつながる理想的な形でのトレーニングの締めくくりとなった。


ケイリン

バイクの梱包とドーム内の清掃を手際よく済ませて最後の昼食。

【閉講式】をもって本年度の4日間の合宿行事をすべて終了した。


閉講式

高校女子選手は平素女子選手同士でトレーニングする機会に恵まれていない。

本合宿は拮抗した競技レベルの女子選手が全国から多数集まり、気象条件や時間に左右されない伊豆ベロドロームで密度の濃いトレーニングを実施することができる。

また他者と比較することで自分自身の長所や短所を具体的に感じ取ることができるとともに、女子選手同士の友情の輪も広がる貴重な機会である。

この事業は強化育成部会のコーチングスタッフや優秀な外部コーチ・スタッフの熱心な指導と親身のサポートを受けることができる素晴らしいプログラムである。

今後もこの女子合宿が継続してさらに発展することにより、高校女子選手の競技レベルの底上げと、さらなる普及につながることを大いに期待したい。


記念撮影


この事業は競輪補助金で運営されています